演劇を生で観るのは何年ぶりだろう? コロナと関係なくフィクションよりも生身の人間の観察と接触が面白くなって以来、演劇とは遠ざかってしまっていた。「ロープ」から15年ぶりに野田MAPのチケットをGETしようと思った時、わたしはそれがどんな内容なのか、誰が出演するのか全く知らなかった。ただただ生の演劇に触れたかったのは、コロナで壊滅的な影響を受けた人と人が生身でふれあう世界への飢餓感があったからに違いない。そして夢の遊眠社以来絶大に信頼している野田秀樹の世界に再会したかったからに違いない。
物凄く人工的な言葉を駆使しながら、世界の解体と衝撃と再統合が起きる野田秀樹の世界がわたしはとても好きだった。
今回も何も知らずに演劇の世界に出会った。タイトルからシェイクスピアへのオマージュもしくはキッチュな取り込みが有るんだろうなと予測したくらい。
クスクス笑いながら観ていて、中盤でちょっと眠気も感じたりして(どんな風にブラッシュアップされるんでしょうね!? 千秋楽まで追いかけたい)、後半ガツンと世界がいきなり安全ではなくなりました。
これです。これが野田MAPの世界でした。
すべての情報は最初から提示されていました。こんなにフェアなミステリーはない。
でもあの言葉が、あの設定が、ある意味安全に距離をおける元型ではなく現実の映し身だったなんて。
こんなにも深く感情を揺さぶられるものだったなんて。
それぞれの観客が、一人一人己れの体験の生と死の狭間に沈みました。フィクションとノンフィクションの狭間で惑いました。
とても浅く感じられた言葉が、生と死の狭間で、フィクションとノンフィクションの狭間、全く異なる次元を映しました。
終劇後のカーテンコールは3回。
声を出して応援できない中、わたしは初めて手を頭の上にあげて打ちならしていました。
何としてもこの感謝と感動を演者やスタッフに届けたい。困難の中、上映してくださってありがとうございます。圧倒的な枠組みの暴力に、得体の知れない理不尽に、解決の見えない世界に抗ってくださってありがとうございます。
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