25.古い呪縛

「お前なんか育てるんじゃなかった」

半年前、わたしはこの言葉を思い出しては感情失禁を起こしていた。

頭と心と丹田に、自分が一番言われたくない言葉をかけて貰おうというワークで、わたしが選んだのはこれ。

実は丹田の声はもう聞こえていた。
親への恨みはもう消えていた。

それでも、頭と心の声って聞こえるのかな?

声をかけて貰った。

まずは頭に向かって。

とっさの反発。
わたしが産んでくれって頼んだんじゃない。
人のせいにしないで。

心に向かって。

悲しみの波がやってきた。
もう台風でも暴風でもない、お湿り程度の悲しみ。
なんでそんなにひどいことを言うの。
やっぱりわたしはいらない子なんだ。

丹田に向かって。

「でもわたしは生きたい」
うわ。
こんなに力強い言葉だったっけ?
丹田は言葉を聞きながら、しっかりと言い放った。

最後に、お腹から出てきた言葉を、頭に向かって言ってもらった。

「でもわたしは生きたい」

言葉はゆっくりと落ちてくる。
頭と心はふるふると震え、すぐに静かになった。
落ちてきた言葉に向かって丹田は、
「そうだ、そうだ!」
と力強く応えた。
頭と心の震えなんか、気にもとめていない。

グループの仲間たちから交互に声を掛けて貰った。
「でもわたしは生きたい」
「でもわたしは生きたい」
……。

そのたびに
「そうだそうだ」
と合いの手が入る。
聞きながら笑うわたしがいる。

いやな言葉を聞けば確かに少しは揺らぐけど、もう呪縛は消えてしまったと、そのとき思った。

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