61.あの子

あのこ。
いつもひとり。

腕を引っ張って連れまわす大人。
あなたは誰?
お昼寝しないとお仕置きだよ。
お前が何を感じていても、知ったことじゃないよ。
言うとおりにしな。
言わなくてもそれくらい分かって当然だろ。

大事なかわいい子。でも、夕方だけ。
だって仕事だもの。
言わなかったっけ?
あんたの家はここじゃないよ。
夜はお家にかえんなさい。

ここはどこ?
知らない人たち。
誰も目線を合わせない。
誰か叫んでる。
何か壊してる。
こわいよ。
なぜここにいないといけないの?
でも、聞いちゃいけないのね。
ぜんぶなかったことにしないといけないのね。

大きくなったら、別の家の子にならなきゃいけないの?
だったら、夕方の家がいいな。
だめなの?
どうして?
これも聞いちゃいけないのね。

わたしはなにを聞いたらいいの?
なにを感じたらいいの?
ぜんぶだめなの?
わかった。
もう、感じるのやめるね。

そしたら、誰か、ずっとそばにいてくれる?
これも、だめ……?

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