かぐや姫の物語

高畑勲さんが好きだ。
それはもう「太陽の王子ホルスの大冒険」から。
というわけで、「かぐや姫の物語」を観に行った。

…生きてきてよかった。高畑さんが生きて新作を創ってくれて良かった。
高畑さんの作品には、嘘と逃げがない。だからいつも安心して観ていられる。
竹取の翁の、欲と愛情。
かぐや姫の無邪気な喜びと嫌悪の影響。
どこにもいる人たちの、生身の思いと行動が、誇張も逃避もなく静かに描かれていくそのぞっとするほどの深さ。

作画が化け物です。
これをつくるのに、どれだけの人が死屍累々となったことだろう…と、冒頭から呆然。
かぐや姫誕生のシーンまでに、絵が動くということの喜びに取り込まれておりました。

そして翁の人臭さ。
うわ~うわ~。宝物を我が物として、妻にさえ手渡したくないという所有欲がさらりと描かれていて、やられた感満載。
男親に掌中の珠として愛される娘の苦しさが、どんなノンフィクションよりもリアル。
特に劇的なエピソードをつくるわけではないのに、細部に宿るリアリティ。これぞフィクション。

無邪気な子どもの喜びと挫折。適応と拒絶。鬱屈そして自立。
得ることと失うことのただの二項対立ではない、めぐりゆくものの意味。
そして神なるものの絶対的中立の惨さ。

人として生きるとはこういうことだ、形を持つというのは、命があるというのはこういうことだと、と絵が、動きが、あますところなく語ってくれる。

作中歌もとんでもないです。これも高畑さんの作曲なんですね…。

…堪能しました。
大人向けの作品かもしれません。
ヒルダ(ホルスのヒロイン)が何かすごい、というのは子どもが観てもわかったので、かぐや姫のすごさもきっと子どもにも伝わる。
でも、ラストの展開は子どもには難しいかな…?
わたしが子ども時代に観ていたら???になったような気がします。

大切なものを得て、失って、それでも生きることって有りだよね、痛みや悲しみさえも生の大切な一部だよねという人におすすめ。
そして「蟲師」好きの人にもおすすめ。

ps.きっとわたしは「もののけ姫」でこれが観たかったんだろうなあ……ようやく願いが叶ったよ。
ps2.翁は男親だけど、媼は祖母。高畑さんの作品には母がいないような気がする。気のせいかな。

コメント

  1. かずみ より:

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    あ、見に行かなきゃ。