6章で断念しました。
心の傷を描く。
ひとつしか出てこない。
斜めにナイフで切り裂かれた体幹。
例えば、
傷口から、内臓をつかみ出して、たたきつけて、これが、あなた達に貰ったものだよ、と言いたい気持ちがある。
収まらない怒りがある。
受け取ってくれ。この血みどろの黄ばんだ脂肪層。内臓。骨。
全部返す、全部私はいらない。何もかも返すから、私をなくして、と叫びたい気持ちがある。
彼らがどれほど苦しんでいたとしても、彼らの時代がどれほど、辛いものであったとしても、
許せない怒りがわたしの中にある。
戦場でもなく、飢饉でもなく、それなのになぜ、わたしは飢えなければならなかったのか? 食べること一切が苦手になるほどに。
飢えを感じないよう、自分を訓練しなければならないほどに。
家族すべてが眠ったあとでないと、安心して眠れない。
不眠症じゃない。恐怖のあまりに。
何か恐ろしいことが、もう起きないと、確認してからでないと眠れない。
痛みも、苦痛も何もかも封印して生き延びた。
毎日、毎日なぜ殺される思いをして生き延びなければならなかったのか。
どうせいらないのなら、
わたしをなくして。
と、叫びたい気持ちが、今もなお確かにある。
親たちに愛情がなかったとは思わない。訓練が足りなかっただけ。
親になる資格は、目に見えないけど確かにあると思う。
ニュースになる昨今、世間は騒ぐけど、わたしだって、子供をもったら殺すよ。
他に方法を知らないもの。
母の時代のように、安価なお手伝いさんっていない。
みんな豊かになったから。
昔、平気で子供を間引きしていたことを忘れて、今の母親達はと嘆く、良識のある人たちに聞きたい。
なぜ、殺してはいけないの? あなたたちはずっと、殺し続けてきたでしょう。
わたしたちを。
東南アジアの、経済的には貧しい国々を見てうらやましくなる。
肉親の情が豊かに残っている土地。
アフリカの内戦を見ると我が家を見る気がする。
親が生き延びるために子供を殺す。
少年兵の眼は、かつての私自身の眼だ。
もはや何にも期待しない。
いつか、
何時の日か、
この悪夢から、
また暖かい日差しの中に、
出て行きたい。
かつて、
一度は、
手に入れたと感じた、
命あることへの感謝と幸福感の中に。
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